これまでの花日記

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ナツフジ

よく海釣りに行かれるご近所の方から、白いフジの花の種と云うのをいただいた。もう10年以上も前になるだろうか。大きな豆のような莢が たくさんぶら下がっていたので、採って来たとのことであった。

種を莢から出して芽が出るだろうかと思いつつ土に埋めておいたらすぐに芽を出した。よほど強い性質らしく成長するのも驚くほど速かった。 蔓が伸び放題になるので、もらった人たちはすぐに音を上げた。

採ってきて近所に配った本人も、家の前にある大きな収納庫の屋根に伸びる蔓を這わせていた。ところが花芽は一向に着く様子がなかった。 そのくせ蔓はどんどん伸び続け、その勢いに恐れをなしたか、いつの間にか処分され、収納庫の屋根はすっきりと元の状態に戻った。

私はというと地植えにして大きくなられても困ると、ある程度成長した苗を直径30p深さ23pばかりの鉢に定植していた。 直径5mmもない頼りなげな茎なのか蔓なのか幹なのかを伸ばしていく苗を二本植え、互いにねじるようにからませたが、ひとり立ちは無理であった。

そこで私は支柱に輪がはめ込まれたつる性植物用の支柱を、頼りない二本の苗の支えにした。50pばかりになるまでは脇から出る蔓は 全部こまめに摘み取って、幹が太くなるよう工夫をして育てた。

その工夫は功を奏し10数年後の今は互いに絡み合いねじれた蔓は立派な幹と呼べるものになり、一本は直径2pばかり、もう一本は 少し細くそれでも1.5pばかりになって、支えなしで自立しているのである。

冬には葉がすべて落ちるので、登頂にこぶを持つねじれた幹だけになるが、春から秋までの葉は、絡んでねじれた幹の上方に青々と茂っている。 ちょうど観葉植物のベンジャミンのようなかっこよさである。

蔓は旺盛に伸びる。それを私はまめに摘む。そうすると根元からも蔓が出てくる。それも摘む。この季節ほとんど私とナツフジとの戦いである。 ところがこのナツフジさん、今まで一度も花が咲いたことがないのである。

この小さな鉢から飛び出さんばかりの勢いで幹を太らせ、葉を茂らせ、蔓を伸ばすのに夢中で、花にまで手が回らないらしいのだ。 自宅の庭にフジ棚を作り毎年フジを見においでよと誘う末弟に聞くと、地植えにしないと花は咲かないよと云う。

別の人は幹が太くなってきているのなら、きっと咲きます。水をやり過ぎているかもしれない。根に少しストレスを与えないと、と云う。 息子は息子で、ちろちゃん(犬の名である)のおばちゃんは白いフジの花を鉢で上手に咲かせているよ。行って教えてもらったらと云う。

そうなんだ。鉢でもちゃんと花が咲くのだとちょっと安心する。こんなに形よく育っているのだから、ここに白いフジの花が垂れ下がったなら、 どんなに素敵に見える事かと、それから私はたっぷりの肥料を与え続けた。

しかし最近ナツフジにあまり肥料をやり過ぎると花が咲かないと書かれた植物の育て方の本を見つけた。なるほど私のナツフジさんは栄養過多なんですねぇ。 メタボ寸前なのだと云う事を知ってあわてました。

去年、車を軽に変えたので、ガレージに少しスペースがある。そこで狭い玄関横からガレージの方に鉢を移し、日当たりも随分良くなった。 これで肥料を制限していけば花がつくのも時間の問題と楽観的見通しのもとに、来年こそは花を見るぞと今から張り切っている。

うまくいくかどうかは神のみぞ知ると云うわけです。咲くかな、咲くかなと待っている時の久方ぶりのわくわく感。いいですねぇ。 秘密の基地の子どものように一人ほくそ笑む私です。

2015.8.18